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新井監督が2年目の佐々木泰を開幕4番に抜てきした。
「あくまでも4番目」と言い切った。
あのスポーツ新聞の記事を読んだ3月の朝、味噌汁をすする手が止まった。
うれしいはずの見出しなのに、喉の奥に小骨みたいなものが引っかかった。
4番目
数えればたしかに4番目だ。でもカープの4番って、そんな数え方で片づけていいものだったろうか?
2026年シーズンが終わったいま、あの小骨の正体をちゃんと確かめておきたくなった。
開幕4番任せた!の見出しと「4番目」という言葉
オープン戦最終戦のマツダスタジアムで、佐々木は先制2ランを含む3安打3打点。16試合中15試合で4番に座りそのまま開幕4番が決まった。
新井監督は報道陣にこう話している。
「あくまでも4番目と思っている。背負う必要もない」
親心なんだろう。
若い背中に余計な荷物を乗せたくない、その気持ちはわかりすぎるくらいわかる。
佐々木本人も「4番という自覚はない。4番目という気持ちで打席には入りたい」と口にした。素直な若者だなと思ったし同時に少しだけさみしくもあった。
だけど、4番って本来は背負うものじゃなかったか。
背負わせてもらえる打者がほんの一握りしかいないから、4番は4番なんじゃないのか。
背負ってきた男たちの背中
創成期、市民の樽募金で球団がどうにか息をしていた頃。地元生まれの藤井弘が4番に座り、負けが込んでもその快音に街は救われていたと聞く。
60年代の山本一義、赤ヘル前夜の水谷実雄。
勝てない時代の4番は、勝ち星よりも「それでもこの人が打ってくれる」という希望を背負っていたんだと思う。
そして山本浩二だ。
市民球場のナイター、カクテル光線の下でバットをぐっと立ててから構える。カーンと乾いた音がして、一拍遅れてスタンドが地鳴りに揺れた。
あれはもう打順じゃなかった。広島東洋カープの名前そのもの。
通算536本の隣には、2215試合連続出場の衣笠祥雄がいた。
死球を受けても顔色ひとつ変えず一塁へ走っていく背中は、数字より先に「休まない」という覚悟を教えてくれた。
90年代は江藤智。
2度の本塁打王、レフトの夜空にすうっときれいに吸いこまれていく打球の角度は、いまでもまぶたの裏に残っている。
2008年、新井が阪神へ移ったあとを引き継いだのが栗原健太だった。優勝なんて遠い夢だった頃、あの男は黙って4番に立ち続けてくれた。
ここからが、ほんとうの本題かもしれない。
2003年、金本知憲が阪神へ去ったあと、山本浩二監督は「4番をつくる」と宣言して新井貴浩を抜てきした。
結果は打率.236、19本塁打で、前年の28本から大きく落ちこんだ。
新井はのちにあの2年間をこう振り返っている。
「あの時に初めて野球をするのが怖くなり、グラウンドにいくのが怖かった」
そうか、あの「4番目」は、監督自身の古傷からにじみ出た言葉だったのかもしれない。
ただ、話には続きがある。怖さを抱えたまま打席に立ち続けた新井は、2005年に43本で本塁打王を取った。
一度は外へ出て、また赤い鯉のユニホームに戻ってきて、2016年には25年ぶりの優勝の真ん中にいた。
翌年からは鈴木誠也がその打順を受け継ぎ、途中怪我の離脱もありながらも3連覇の打線をぐいぐい引っぱった。
4番を背負って、つぶれかけて、それでも4番を背負い直した新井貴浩。
その人が若い4番に「背負わなくていい」と言う。
優しさなのはわかる。でも、あの背負い直した日々こそが新井貴浩の4番を本物にしたんじゃないかと、どうしても思ってしまう。
現実は甘くなかった。
佐々木は開幕から11試合連続で4番に座り、4月4日にはプロ216打席目で初アーチを放ったものの、5月4日、打率.180、2本塁打で2軍での再調整が決まった。
その後は坂倉将吾が4番に定着して15本74打点。でもFA移籍で来シーズンは存在そのものが流動的。
チームは4位で、首位阪神とは17ゲーム差、チーム打率.223という数字からは目をそらせない。
佐々木を責める気はまったくない。23歳の2年目で、最後は121試合に出て打率.254まで這い上がってきた。
それに、相手投手や調子で4番を入れ替えるのは、いまのカープとしては筋が通っているかもしれない。
「4番目」という言葉も、きっとその流れの中から出てきたんだろう。
巨人の「第〇〇代読売巨人軍4番打者」のように神格化する必要はない。
それでも、鈴木誠也以来の本物の4番打者をそろそろ見たい。
ここは自分の場所だと、顔に書いてある4番打者を…
2027年の開幕4番は誰だ
4番目でいいと言われて立つ打席と、4番を背負って立つ打席。
打球の飛び方は同じでも、ベンチの空気とスタンドのカープファンの息づかいはきっと違う。
坂倉が今シーズンつかみかけた手ごたえもある。5月に佐々木が味わった悔しさは、来年の打席でこそ生きるはずだ。
新井監督には、来年こそ「カープの4番」と言い切ってほしい。
その一言で若い背中がしゃんと伸びることだって、カープの歴史はちゃんと知っている。
来年3月のマツダスタジアム。
5:30のスターティングラインナップ紹介のオーロラビジョンで打順4番が表示されたあとの、ほんの一瞬しんと静まり、そしてスタンドがどよめいて歓声が上がる。
どうか胸を張って4番を背負ってほしい。
2026年シーズンは、4番に佐々木泰を置いて、ものの見事に失敗した。
2027年シーズン開幕戦の4番は、果たしてどの選手が起用されるんだろうか。


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