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中日 6 – 2 カープ
あの栗林が自分から球審に歩み寄った。
その瞬間バンテリンドームのビジター席がしんと静まりかえった。
5月22日金曜日のナイター。防御率0.78、19イニング連続無失点。前回登板で今季2度目の完封を飾った右腕がわずか17球でマウンドを降りるなんて誰が想像できたか。
1回2アウトから細川に四球を与えた直後、栗林は異変を訴えてベンチへ小走りに引き揚げた。右内転筋の違和感。
数分後にマウンドへ戻ったけど、もう球が走っとらんのは素人目にもわかった。
阿部に先制タイムリーを右前へ運ばれ、石伊にも続かれて0-2。ここで栗林は二度目のベンチ裏行きそのまま降板となった。
チームトップの4勝を挙げとったエースの背中がなんとも小さく見えた夜じゃった。
緊急登板の鈴木が踏ん張り 打線は柳の前に沈黙
スクランブルでマウンドに上がった鈴木健矢はようやってくれた。小園のエラーで満塁にされ鵜飼に左中間へ2点タイムリーツーベースを浴びて0-4。
ただ、そこからが鈴木の真骨頂じゃった。2回から4回まで走者を出しながらも追加点は許さずゲームを壊さんように堪えた。
5回からは益田もゼロで6回まで抑え、投手陣は意地を見せた。
問題は打線よ。中日先発の柳がほんまに厄介じゃった。キレのある真っすぐにフォークを絡められ狙い球が絞れん。
4回は先頭の菊池が四球で出ても、小園が一ゴロ、坂倉とモンテロが連続空振り三振。
6回も上位の菊池、小園、坂倉が三者凡退と中軸がまるで機能しとらん。
スコアボードに並ぶゼロの行列を見ながら、これはいよいよ今季7度目の完封負けかと覚悟した。
背番号121の男が右中間を破った
7回、試合が動いた。動かしたんはきのう支配下登録されたばかりの男じゃった。
名原典彦。広島出身、瀬戸内高から青森大を経て2022年の育成ドラフト1位でカープに入団。昨オフには一度、戦力外通告を受けた。
それでも再契約を結びファームで打率.242ながら8盗塁を積み上げて必死に這い上がってきた25歳。
この日は背番号121のまま、8番ライトでプロ初スタメンに名を連ねた。
5回の第2打席で柳のカーブを捉えてセンター前に弾き返しプロ初安打。記念球がベンチに届けられたときの、あのはにかんだ顔がよかった。
けど名原の本領はここからじゃ。0-4の7回、1アウトから持丸が四球を選び、佐々木は三ゴロに倒れて2アウト一塁。もう後がない場面で名原のバットが火を噴いた。
右中間を真っ二つに破るタイムリースリーベース。プロ初打点。三塁ベース上に立った名原の姿にわしは胸が熱うなった。
ファームで走りまくってきた足で一塁から一気に三塁まで駆け抜けた。
続く代打の二俣がライト前に落として2-4。中村奨が中前打でつなぎ菊池の四球で2アウト満塁。あと一本、あと一本出てくれと祈ったが小園の打球は二塁ゴロ。
その直後の7回裏、塹江が石川昂に2点タイムリーを浴びて2-6。勝負はそこで決まった。
8回は吉田に沈黙、9回は守護神・松山の前に佐々木の内野安打だけ。最終スコア6-2、16勝24敗の借金8。5位のままで名古屋の最初の夜は終わった。
負け試合じゃ。栗林の離脱がどれほどの期間になるか、それを考えるだけで胃が痛い。小園のエラーも、チャンスでの凡退も、苦しい内容じゃったのは間違いない。
それでも名原典彦がおった。一度は戦力外を突きつけられた地元の男が、育成から這い上がり初めて立った1軍の打席で右中間を破った。
支配下登録の翌日に「勝負の1年なので、必死に食らいついていくぐらいの気持ちでずっとやっていました」と語った言葉をバットで証明してみせた。
あしたもバンテリンドームで中日との2戦目がある。栗林のぶんまで誰かが踏ん張るしかない。
名原、おまえの走りと打撃がチームの空気を変える力になるかもしれん。
負けたけど希望は消えとらん。借金8なんぞ、ここから返せばええんじゃ。


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