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カープ 1 – 3 ロッテ
たった一球の、たった一つのフライで試合がひっくり返った。
8回表マツダスタジアムの空気が一瞬で凍りついた昨晩のことを書く。
交流戦の開幕カード、相手は千葉ロッテマリーンズ。1回裏、大盛がフルカウントから右中間へ叩き込んだ3号ソロで先制したときには、きょうはもらったと確信したお花畑のわし。
なにしろマウンドには床田がおる。96球、7回を投げて被安打7ながら無四球、奪三振8の無失点。粘り強く、しぶとく、ロッテ打線に的を絞らせんかった。
新井監督も「今日が一番真っすぐにキレがあったんじゃないのかな。ナイスピッチングです」と認めた力投じゃった。
勝ちパターンのはずだった8回の悪夢
1-0のまま迎えた8回表。床田からハーンへスイッチし、佐々木に代えて中村奨成を左翼の守備固めに入れた。ここからは逃げ切りの態勢じゃと、スタンドもベンチも信じとった。
ところがハーンがつかまる。西川に左中間への二塁打を浴び、続く山口には詰まらせたはずの打球が右前にポトリ。
1-1の同点。まだ1アウト一塁、踏ん張れるはずじゃったのに、佐藤の一塁ゴロをモンテロが二塁へ悪送球。さらにハーンの暴投で走者が進み、2アウト二三塁という最悪の形になってしもうた。
ゲッツーで終われた打球じゃった。確実に一つアウトを取れば、まだ傷は浅かった。
それが送球ひとつでこうも景色が変わる。野球いうのはほんまに残酷なスポーツよのう。
あの空に上がったフライと名原の涙
2アウト二三塁。代打で出てきたソトが放った打球は、右翼方向に高く舞い上がった。
二塁の菊池が背走し、一塁のモンテロも追う。ライトの名原も前に出た。
誰が捕るんか。声が出んかった。白球は、飛びついた名原のグラブの前でバウンドし、ランナー二人が生還した。
記録は右前2点適時二塁打。1-3。勝負が決まった瞬間じゃった。
試合後、名原は数十秒の沈黙のあと、絞り出すように言うた。「一番、悔しいです」。目には涙がたまっとった。
「菊池さんの場所を見てしまっていたから、一つ遅くなった」。支配下登録されてからわずか5日。
本拠地デビュー戦で終盤のあの緊張感の中で声が出せんかったと、25歳の若鯉は自分を責めた。
赤松守備走塁コーチがベンチで声をかけた。「高く上がった時は、『菊さんが来るんじゃないか』って思うんじゃなくて、まずは自分で行く。この経験を絶対に生かさないといけない」。
名原は九回もベンチでコーチの言葉に耳を傾け続けとった。
わしはあの涙を見て、腹が立つどころか胸が熱うなった。
中日3連戦で3試合連続複数安打を打ち、フェンスに体をぶつけながらファウルフライを捕った男が悔しゅうて泣いとる。その姿に嘘はない。
名原自身も言うとる。「足と守備が売り。ああいうプレーをしてしまうと、チームが負けてしまう。同じ失敗はもう二度としない」。この言葉を信じにゃいけん。
新井監督は 「誰かのミスとかじゃなく、その前の段階で取れるアウトを取っておかないと相手に流れがいってしまう」 と語った。
名原一人を責めるのではなく、モンテロの悪送球、ハーンの暴投、そこに至るまでの流れ全体を振り返る言葉じゃった。新井監督のこういうところがええんよ。
打線はわずか4安打。4回の2アウト一三塁から重盗を仕掛けて失敗するなど攻撃面でもちぐはぐな部分はあった。
ロッテ先発ジャクソンの6回102球を打ち崩せず床田の力投を援護できんかったのは悔しい。5回以降は1本もヒットが出とらん。
ただ、きょうの負けで交流戦が終わるわけじゃない。
目標は12勝6敗。まだ1敗しただけで、あと5回は負けられる計算になる。
セリーグでは18勝25敗、5位という苦しい位置におるカープにとって交流戦は巻き返しの舞台にせにゃいけん。
床田は確実に状態を上げとる。13イニング連続無失点。
この男がローテの柱として回ってくれる限りチームの屋台骨は揺るがん。
エラーとフォアボール、この二つだけは気をつけてくれえ。失点の大半はそこから生まれるんじゃけえ。
名原、泣いたぶんだけ強うなれ。あの涙は1軍の重さを知った証じゃ。
マツダスタジアムの夜空に上がったあのフライをおまえはきっと一生忘れん。忘れんでええ。忘れんほうがええ。
次に同じ打球が上がった時は今度は迷わず声を出して、自分の手で捕ってくれ。
我慢強いカープファンはそれを待っとるで。


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