
ランキング応援うれしいです!ありがとうございます
Xのフォローも待ってます!
Follow @gyoraidou
新井監督の笑みにあしたのご縁を祈るドラフト前夜
カープが5年ぶりにドラフト1位指名を事前公表せず、新井監督は候補について「決まっている」とだけ語って、あしたの会議を迎える。
決まってるけど言わないんだってさ
ここ4年、カープは1位の名前を前もって堂々と口にしてきた。それが今年は、ぴたりと口を閉じたんですよ。
瀬戸内の牡蠣なのか?
この沈黙、ただの作戦だけじゃない気がする。
3年連続Bクラスに終わったチームの、腹のくくり方みたいなものが透けて見える。
決まっているけど言わない そのひと言の重さ
21日、東京都内でスカウト会議を終えたカープは1位指名を公表しなかった。
斉藤優、常廣、宗山、立石と4年続けて名前を明かしてきたから、伏せるのは2021年の隅田以来になる。
新井監督は候補について「決まっている」と認めつつ、「公表はしないです」。
そして笑みを浮かべながら、こう続けた。
「たくさん良い選手がいると思うので、良いご縁をいただけるように願っています」
ご縁、か…
いかにもこの人らしい言葉で、読んだ瞬間に肩の力がふっと抜けた。
一方で田村スカウト部長は「ある程度まで絞り込みました」と話し、最終決定は当日に持ち越す見通しだという。監督は決まっていると言い、部長は絞り込んだと言う。
でもね、この小さな言葉のずれに、今年のカープが抱えている事情がぎゅっと詰まっている気がするんだ。
胸にしまった名前と埋めたい穴
伏せる理由として、まず浮かぶのは他球団との駆け引きだろう。
今月9日の会議のあとにも部長は、他球団の動向もあるから前日に決まるとも言い切れない、という趣旨の話をしていた。
だけど、それだけじゃない。
今オフのカープは、チームの背骨そのものがぐらついている。
床田、森下、坂倉。4番打者と左右のエース。
国内FA権を手にした3人が、そろって行使を熟考中だと報じられている。
もし誰かが抜けたらと考えると、夜の台所で冷蔵庫のブーンという音がやけに大きく聞こえてくる。
上位候補として名前が挙がるのは、青学大の渡部海捕手と鈴木泰成投手のバッテリー、そして近大の宮原廉投手だ。
大学No.1の呼び声がある捕手に最速155キロの右腕、さらに最速156キロまで伸ばしてきた広島出身の剛腕。
並べてみると、ため息が出る。
どの名前も、いまのカープの空いたところにすっとはまって見えるから困るんだよな。
坂倉がどんな決断をするかで、捕手を獲る意味はがらりと変わる。
マウンドだって、床田と森下の行方しだいで来年の景色が別物になるかもしれない。
宮原は崇徳の出身で、高校時代はプロから注目される存在じゃなかったらしい。
近大の4年間で球速を14キロも伸ばしたと聞くと、それだけでもう物語ができあがってしまう。
地元で育った若者が、真っ赤なスタンドを背に腕を振る。
想像しただけで、マツダスタジアムの黒土の匂いまで鼻の奥によみがえってくる。
新井監督の「決まっている」は、空いたところをひとつずつ数えて、悩み抜いた末の答えなんだろう。
いちばん欲しい1人を胸にしまって、あとは相手の出方とくじの神様を待つ。そんな顔に見えた。
去年のことを思い出す。
立石を3球団で争って外し、平川で今度は日本ハムとぶつかって引き当てた。
あの瞬間、テレビの前で思わず膝をパチンと叩いた。
平川も3位の勝田も開幕スタメンに名を連ね、デビュー戦でそろってヒットを打った。春先の朝刊は、ルーキーの名前で毎朝にぎやかだった。
ただ平川は6月にけがで離脱し、29試合で打率1割8分6厘。
勝田は109試合に出たものの、打率は2割3厘にとどまった。
数字だけ見れば、物足りないかもしれない。
それでも7人のうち6人が1軍のグラウンドを踏み、6位の高校生内野手までプロの空気を肌で知ったんだよね。
指名された日は、ゴールじゃない。
春の拍手と夏の悔しさの両方を知った去年のルーキーたちが、今度は新しい後輩を迎える番になる。
もちろん、浮かれてばかりもいられない。
今季は4位で、新井監督就任4年目にして3年連続のBクラス。本拠地最終戦のあとのセレモニーで指揮官は頭を下げ、「カープは来シーズン、生まれ変わります」と口にした。
今月1日には、レギュラーとして出場を重ねた選手たちにも戦力外が告げられた。チームを揺らした出来事が重く残っていることも、ファンならみんな知っている。
ドラフトの1人で、全部が埋まるわけじゃない。
新人に背負わせすぎるのも違うだろうと、自分に言い聞かせている。
他球団からは、空きの多いチームに見えているかもしれない。
ただ、空いているということは、そこに誰かの居場所があるということでもある。
あしたの夕方 テレビの前で待つもの
あしたの夕方、会場のテーブルに並ぶスカウトの手元をたぶん何度ものぞき込んでしまう。
名前が読み上げられる前の、あのしんとした数秒。
競合になれば、また誰かがくじの箱に手を入れる。
外れたって1年が決まるわけじゃないことは、去年の外れ1位から開幕スタメンに立った平川がちゃんと見せてくれた。
ただ願うくらいは許してほしい。
何十年も球場に通い、雨の日もネット裏で目をこらしてきたスカウトの足と目が、きちんと報われますように。
新井監督のいう「ご縁」は、たぶんドラフトの日だけで終わる話じゃない。
指名された若者が赤いユニホームに袖を通し、日南の春に汗をかき、いつかマツダスタジアムの歓声を浴びる日まで続く。長い長い縁なんですよね。
生まれ変わると誓った来季の最初の1ページは、あしたの夕方に書き込まれる。
胸にしまってあるその名前を早く聞きたい。


コメント