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阪神 1 – 5 カープ
たまにはすべてが噛み合う夜があってもいいじゃないの。
打線も投手も走塁も守備も、ひとつずつ歯車がカチッとはまっていくような。9月19日の甲子園がまさにそれでした。
首位・阪神を相手に5対1。連敗を2で止めたこの一戦は、53勝72敗の数字からは想像できないくらいカープらしい強さに満ちていた。
相手の先発は村上。防御率1.93、今季10勝。正直、打線にとっては嫌な相手です。
しかも2日前の甲子園では7対2で大敗したばかり。中村奨成が走塁死を喫して新井監督に「止まることも勇気だから」と諭されたあの夜の記憶が、まだ消えていません。
42,645人の甲子園。赤いユニフォームはレフトビジターの一角に固まって、9連戦の3試合目に向けて息を吸い込んでいました。
107キロのカーブが空を切り裂いた佐藤の先頭打者ホームラン
試合開始から、わずか3球です。
1番・佐藤啓介が打席に立って、村上の107キロのカーブをフルスイングした。打球はセンターバックスクリーンのやや右へ。先頭打者ホームラン。
甲子園がシーーーンと静まったあの一瞬の空気、たまらんかったですね。
あの球速のカーブを完璧にとらえるというのは、しっかりボールを呼び込んで打たなければできない芸当。
新井監督も「すごく成長を感じます。良いものを見せてくれていると思います」とコメントしていたけど、この一振りには佐藤啓介の覚悟がそのまま乗っていたように見えました。
でもね、首位の阪神はそう簡単に引き下がってくれない。
その裏、近本がライト前、中野がレフト前と立て続けに連打。中野が二盗を決めて2、3塁。佐藤輝明の犠飛であっさり同点にされる。
栗林の表情がほんの少しだけ硬い。初回から走者を背負う展開は、見ていてもどこか胃がキリキリする。
ところが2回以降の栗林がよかった。フォークが低めにきっちり落ちはじめて、阪神打線のバットが空を切る。2回は三者凡退。3回も三者凡退。村上にも空振り三振を奪って、テンポよくイニングを重ねていきました。
そして4回表。この試合の流れを決定的にした場面が訪れる。
走った奨成 落ちたボール 勝ち越しの匂いがした4回表
先頭の中村奨成が打席に入りる。2日前に走塁死を叱られた、あの奨成です。
カウント2-2から村上のカットボールを打ち返した打球はレフト方向へ。普通のレフトフライ、そう思った瞬間でした。左翼手の立石がグラブに掴み損ねて落とした。
ここからが奨成の真骨頂でした。
打った瞬間からフライだと判断せず、全力で走っていたんです。落球を見てからではなく、打った時点で足が動いていた。エラーが起きたときにはもう2塁を蹴っていて、一気に3塁まで到達。ノーアウト3塁。
新井監督はこう語っています。
「当たり前のことだけど、奨成がしっかりと走っていたので、三塁まで行けた。そういう隙を見せないことはチームとして徹底しているので」
当たり前のこと、と監督は言った。でもその当たり前が、2日前にはできなかった。叱られて、悔しくて、それでもきちんとやり直してきた中村奨成。そういう若い選手の姿を見ると、胸の奥が少しだけ熱くなるんですよ。
続く坂倉がフルカウントからセンターへ犠牲フライを打ち上げて、2対1。勝ち越し。
地味だけれど、この1点にはいくつもの伏線が詰まっていた。
6回表、さらにカープの攻撃が続く。2アウトから坂倉がショート内野安打で出塁し、盗塁で2塁へ。ここで打席に立ったのが佐々木泰でした。
きのうこのブログのコラムで書いた。5本塁打では足りないもっと打ってくれと。得点圏で打てていないじゃないかと。あのコラムを出した翌日にこれをやるか、という一打。佐々木泰はこのブログを読んでいるのか?
阪神2番手・木下の初球をしっかりとセンター前へ弾き返すタイムリー。3対1。
佐々木自身が「しっかりいい入り方ができた」と語ったとおり、この打席には迷いがなかった。
9月の打率は3割超え通算90安打。あと10本でシーズン100安打に届く男の顔がそこにはありました。
佐々木泰の三塁線と栗林の白い歯
8回表、カープは佐藤啓介のレフト前ヒット、菊池の四球、中村奨成の犠打で1アウト2、3塁のチャンスを作り、坂倉がライトへ2点タイムリー。5対1。これでほぼ勝負ありのはずでした。
簡単には終わらせてくれんのよ、ほんま。
8回裏、栗林がマウンドに上がると先頭の近本にライト前ヒット、続く中野にもレフト前ヒット。ノーアウト1、2塁。
甲子園がざわつき始めました。4万人の大歓声が、じわりとマウンドを押し込んでくる。
こんな時に限って打席には森下。
栗林が投じたフォークに森下のバットが反応して、三塁線に鋭い打球が飛んでいった。ここで佐々木泰が動いた。逆シングルで打球をつかみ取り、若干遠い三塁ベースを踏んでそのまま一塁へ鬼肩送球。ファインプレー&ダブルプレー
久しぶりのサード守備で、この場面でこのプレー。
栗林自身が「泰が良いプレーしてくれて、ゲッツーになったおかげ」と感謝したのも当然でしょう。
佐々木がベンチに戻るときにハイタッチした栗林の白い歯が、テレビ越しにもはっきり見えました。
ここで栗林は降板。7回と3分の2、被安打7の1失点。今季の阪神戦はこれで5登板すべて7回以上、1失点以下。防御率0.91。虎キラーという呼び名が冗談に聞こえないくらいの数字です。
「自分の武器をしっかり今回の登板では使えたかなと思います」と栗林は穏やかに振り返っていましたが、あの仁王立ちには穏やかという言葉は似合わない。
8回の残りは髙が佐藤輝明をキャッチャーゴロに仕留め、9回は森浦が三者凡退。
最後の打者が一塁ゴロに倒れたとき、甲子園の赤い一角から空をつんざく拍手と歓声が響いていました。
新井監督は「9連戦の中で、しっかりイニングを投げてくれたし、言うことないです」と栗林をたたえました。
言うことないです、なんて監督の口からなかなか出てこない言葉です。それだけ頼もしかった。
佐藤啓介の先頭打者ホームラン、中村奨成のあきらめない走塁、佐々木泰のタイムリーとファインプレー、栗林のフォークと気迫。
ひとつひとつは別々の場面なのに、全部がつながって大きなひとつの流れになっていました。
53勝72敗。6位。数字だけ見れば苦しいシーズンです。でもこういう夜を見てしまうと、この選手たちにはまだ見せてくれるものがあると、つい信じたくなる。
栗林の今季4度目の連敗ストッパーという記録が静かにそのことを証明してくれています。
あしたからバンテリンで中日2連戦、2連勝で5位浮上。4位フィニッシュできるはずだよ。
きょうの投打が噛み合った雰囲気を、そのままバンテリンに持ち込んで2連勝してくれ。
頼むでぇ~


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