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中日 3 – 4 カープ
負けたら最下位。その四文字が、マツダスタジアムの夜風にずっしりと乗っかっとった。
2005年を最後に、21年間カープは最下位に沈んどらん。
どんなにBクラスをさまよっても、そこだけは踏みとどまってきた意地がある。
8月2日、後半戦最初のカード3戦目。28,045人が詰めかけたマツダスタジアムの空気は、期待よりも祈りに近かった。
前日は1-7の大敗を喫しとる。きょう負ければ中日と順位が入れ替わりついにセ・リーグの底に落ちる。
そんな崖っぷちで先発マウンドに上がったアドゥワが、3回5安打2失点でわずか60球持たずに降板した。
3回、樋口にタイムリーを許し、サノーの犠牲フライで0-2。
嫌な空気じゃった。ほんまに嫌な空気じゃった。
鈴木健矢の3イニングが試合をつないだ
ただ、カープはすぐにやり返す。
その裏、大盛が柳から右中間へ5号ソロを叩き込んで1点差。
さらに2アウト二塁から坂倉がショートへの内野安打で同点に追いついた。
泥臭い当たりじゃったけど、あの場面で食らいつく坂倉の執念には頭が下がる。
そしてこの試合の陰の立役者は、2番手で登板した鈴木健矢じゃろう。
アドゥワが早々に崩れた直後の4回からマウンドに上がり、3イニングを無失点で切り抜けた。
新井監督が 「健矢が今日も3回をピシャッといってくれた。本当に健矢の存在はブルペンでも際立っていると思います。今日もナイスピッチングでした」 と称えたのは決してリップサービスじゃない。
あの3イニングがなければ逆転の8回は来んかった。試合をつなぐ投球というのは、こういうことを言うんじゃと思う。
けれど7回、辻が石伊にタイムリー二塁打を浴びて2-3と再びリードを奪われる。また突き放された。
最下位の影がまたスコアボードにちらつき始めた。
正直に言うと、わしはこのとき覚悟しかけとった。きょうはもうダメかもしれん、と。
まさに千両役者 秋山翔吾の逆転2ラン
8回裏。2アウト、ランナーなし。ここから坂倉が粘って左前打で出塁すると代走に勝田が送られた。
打席には5番の秋山。相手は左腕の吉田。防御率1.47の好投手で秋山にとっては初対戦じゃった。
カウント1-1。3球目。秋山が大きく曲がるスライダーを体の開きを抑えて振り抜いた。
打球は右中間へぐんぐん伸びていく。スタンドが一斉に立ち上がった。フェンスを越えて白球がスタンドに吸い込まれた瞬間マツダスタジアムが揺れた。逆転2ラン。4-3。
秋山は 「腹をくくってもいいかなと。あの球が来そうだなって、ちょっと予感があった」 と振り返っとる。
ネクストバッターズサークルで吉田の軌道を確認し、初見でもイメージを描いていたという。
「手応えはあったが自信はなかった」 という言葉が、あの打球がフェンスを越えるまでの数秒間の心境をよう表しとる。
38歳のベテランが、2アウトから放った一発。千両役者という言葉は、こういう夜のためにある。
9回は森浦が13セーブ目を挙げて試合を締め勝ち投手は4番手の遠藤がついた。
この日のマツダには特別な客がおった。秋山が自ら招待したひとり親家庭の親子13組30人。
西武時代の2015年から続けとるライフワークでカープ移籍後も毎年欠かさず続けている活動じゃ。
今季はけがで途中交代した試合もあり、なかなか招待試合で活躍を見せられんかったらしい。
お立ち台で秋山は 「大きな歓声をいただけて幸せです」 と笑い、 「そういう人たちの前でヒーローインタビューまでできたっていうのは、今年は良い締めくくりだったなと思います」 と語った。
ただ打つだけじゃない。誰かのために打つ。その覚悟が、あの打球に乗っとったんじゃないかと思えてならん。
新井監督は試合後、 「彼とアキのおかげかなと思います」 と鈴木健矢と秋山の名を挙げ、 「今日みたいな試合を1試合でも多くして、ファンの方に喜んでもらえたらと思います」 と語った。
6カードぶりの勝ち越し。後半戦最初のカードを2勝1敗で終えたことは、借金15まで膨らんだ夏の苦しみの中で小さいけれど確かな光じゃった。
3位ヤクルトとの差は4ゲーム。まだ遠い。
けど、21年間最下位にならんかったカープの意地は、きのうの夜も生きとった。
秋山のひと振りが証明したものは、順位表の数字以上に大きい。
8月はまだ始まったばかりじゃ。ここから巻き返せばええ。
マツダスタジアムの熱い夏はまだ終わっとらん。


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