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ソフトバンク 0 – 3 カープ
こういう試合が見たかった。
月曜の昼下がり、宮崎・天福球場。フェニックスリーグもあと数日で幕が下りるというこの日に来年のカープの輪郭がくっきり浮かんだ気がした。
今季は4位で借金17。秋風がしみる数字だ。
だからこそ宮崎から届く知らせにはつい前のめりになる。
前の試合では久保が5打数5安打の大当たり、その熱がまだ冷めないうちのソフトバンク戦だった。
マウンドには佐藤柳之介。2年目の左腕にとってこれがこの秋最後の先発になる。
雨にたたられた18日のロッテ戦は99球で途切れた。今度こそ最後まで投げきるところを見せてほしい。
そんな祈るような気持ちで12時半のプレーボールを待った。
2アウト満塁のライトフライ そこから佐藤柳之介が目を覚ました
1回はさらりと三者凡退。笹川をセンターフライ、中澤を空振り三振でまずはいい滑り出しだ。
でもね、2回にいきなり試練。
先頭の髙橋の打球がセンターへぐんぐん伸びていく。久保のグラブには当たったものの、そのままフェンスに直撃の2塁打だ。
そこから空振り三振をふたつ取りながら、四球もふたつ出してしまう。気づけば2アウト満塁。
ここで一本出たら、この秋の総決算がいきなり苦しい展開になる。
迎えるは9番の漁府。打球はふわりとライトへ上がり、二俣のグラブにすとんと収まった。
思わず声が漏れたのは、たぶん私だけじゃないだろう。
3回もまた冷や汗だ。2アウトから石塚にセンターオーバーの三塁打を浴びたけれど、髙橋をライトフライに仕留めて切り抜けた。
打線のほうは相手先発の岩崎にうまく抑えられていた。
1回も2回も三者凡退で、ぱっとしない空気がじんわり漂いはじめる。
狙ったストレートがライト最深部へ 久保修の目覚めの一打
その空気をひと振りで変えたのが久保だった。
3回裏、先頭の西川が四球を選ぶ。小林のファーストゴロでランナーは2塁へ進み岸本はセカンドフライ。
2アウト2塁、打席に1番の久保。
正直に言うとこの場面はそこまで期待していなかった。2アウトだし岩崎の球にはずっと力があったから。
そこへ来たストレートを久保は迷いなく振り抜いた。
カーンと乾いた音がして、白球がレフトの空へ高く高く上がっていく。追いかける外野手の足が途中で止まり、打球はレフト奥の芝生で弾んだ。
2点先制。ベンチの前で手を叩く仲間の顔が、遠い宮崎からでもはっきり想像できた。
試合後の久保は、笑顔でこう振り返ったそうだ。
「ストレートを狙って仕留めきれた」
狙い球を決めてその1球を逃さない。
言葉にすれば簡単だけど今季の1軍でそれがどれほど難しかったか、本人がいちばん知っているはずだ。
ここ3試合で10安打。しかもこんな言葉まで出てきた。
「打席であれこれ考えなくなった」
この一言がいちばんうれしかった。
迷いの消えた打者は構えからして違う。ダイヤモンドを回る足取りもどこか軽く見えて、肩の荷をひとつ下ろしたようなそんな背中だった。
2点をもらった柳之介もここからが別人だった。
4回は三者凡退。5回に2本のヒットを許したものの、石塚をサードゴロに打ち取ってゼロを並べる。
そして6回、7回、8回とテンポよく三者凡退が続く。6回には髙橋のゴロをサードが好守でさばいてスタンドからおおっと感嘆の声が上がった。
投げるのが早いと守る側のリズムも良くなる。
野手の一歩目が軽くなる、あの感じが画面越しにも伝わってきた。
MAX147キロ、平均144キロ。数字以上に、ストレートを投げる腕の振りが強かった。
左打者にはチェンジアップも混ぜていた。この秋で手に入れた武器なんだろう、打者の腰がふっと泳ぐ場面が何度かあった。
9回のマウンドへ 130球目まで腕を振りきった
8回裏、打線がもう1点を取ってくれた。
2アウトから二俣がサードへ叩きつけて内野安打。続く仲田の打球を相手のショートがはじき、送球もそれる間に二俣がホームまで帰ってきた。
きれいな得点じゃない。でも3点目はほんとうにありがたかった。
9回、柳之介は迷わずマウンドへ向かった。
髙橋をレフトフライ、アルモンテには四球を出したが、渡邉陸を空振り三振。最後はザイレンの打球がライトへ上がる。
捕った瞬間、肩の力がすうっと抜けた。
9回130球、4安打8奪三振、無失点。この秋最後の登板を完封で締めくくってみせた。
あの130球目まで腕の振りは最後まで緩まなかった。
2回のピンチでもう1球ゆるい球を投げていたら、この結末はなかったかもしれない。
いまの柳之介には、ローテーションの空いた椅子がちゃんと見えているんだろう。そう思わせるまっすぐな9イニングだった。
ふたりとも決め手はストレートだった。
打つ側は狙って仕留め、投げる側は力でねじ伏せる。同じ1球を挟んで向かい合う勝負に、ふたりとも真正面から勝ったんだよな。
宮崎の秋もあとわずかだ。
来年の春マツダスタジアムのマウンドで腕を振る柳之介と1番打者としてストレートを叩く久保の姿を思い浮かべながら
今夜のビールはいつもより多めに飲もう。


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